オンライン報告書 - 2001 年 訪ロ企画 - 訪ロを終えて

Нормально!!!

東京外国語大学 2 年 Y. H

Нормально (ナルマリナ) [=大丈夫、何とかなるさ]、ロシア人はこの言葉を良く使う。本当に使う。何度聞いたかなんて分からない。ロシア人は疲れていても、めったと疲れたと言わないし、これちょっとヤバイだろう? という状態でも気楽にこの言葉を繰り返す。去年うちに泊まったスベータは、初日に東京駅でスーツケースが壊れているのを見た時も、この言葉を口にしていた。僕はこの言葉が嫌いではないが、少し楽観的過ぎで無責任な発言のように思っていて信用が出来なかった。しかし今回ロシアでその認識を少し変える出来事があった。

8 月 23 日、飲料メーカー見学の日。しかしリャザンで解決したと思われた VISA の期間延長手続きが完了していないことが判明し、写真がどうしてもすぐに必要になったため、僕と T は見学を途中で切り上げ、ホストの学生 2 人と写真屋へ行かざるを得なくなった。

工場を出たのは 5 時ごろで、VISA の申請所は 6 時きっかりに閉まる。急いでバスと地下鉄でノボシのセンターへ向かう。バスの中でそこまでどの位かかるのか聞いても、よく分からないと言う。僕らが不安になる度に彼女達は「Нормально」と言った。

外は雨が降っていた。都市のセンターに着き写真屋を探す。ロシアには日本のように写真を撮ってすぐ出来上がるところはそんなにない。もちろん、街中にスピード写真の機械などもない。その為、1 軒目の写真屋はアウト。雨の中走り 2 軒目へ。2 軒目は「Быстрое Фото」(スピード写真) との看板が出ていて、そこで写真を撮る。出来上がりまで 15 分から 30 分と言われたが、これは 30 分と見たほうがいいと思い、さらに不安になる。彼女たちは笑いながら「Нормально」と言っている。店員を急かして 20 分位で受け取る。その時、時間はすでに 5 時 45 分を回っていた。

僕らは彼女達に続いて店を飛び出し、雨の中を走った。彼女達はタクシーを拾うという。タクシーとはもちろん、そこら辺を走る普通の車の事だ。少しの間つかまらないと、車の多い所まで再び雨の中をダッシュ! 僕らは少し驚きながら、ただ着いて行く。信号待ちをしている 1 台の車の運転手にお願いし、乗せてもらう。これでもう安心かと思いきや、さらに驚いた事に、彼女達はその申請所の詳しい場所は知らないという。分かるのは建物の名前だけ。こんな状況でもやはり彼女達は・・・・・・。

重い空気が車内を流れ、それをかき消すかのように必要以上に車はガタガタと上下に揺れ、我に返る。「Нормально? どこが!?」と思った。僕らなら、諦めて別の手段を探そうと途方にくれるような気がする。しかし彼女達は車が建物に近づいたかと思うとすぐに、窓を空けて、隣の車の運転手、通行人に大声で、「Скажите пожалуйста, где...?」(すいません、~はどこですか?) と聞く聞く。勇ましかった。無駄な時間は 1 秒もなかっただろう。そんな中 5 ~ 6 人に道を聞き何とか申請所に到着。時間は 6 時の 2 分前くらい。何とか間に合った。建物の入り口で幹事長の N と M さんが手を振って叫んでいる。「間に合った!」

申請所では心配しまくる日本人 4 人とは裏腹に、この日の企画には来ず VISA の仕事を引き受けてくれた、例のスベータ達が、驚く様子もなく、いつものようにニコニコしながらマイペースで VISA の申請手続きをやってくれていた。僕らをここに連れてきた彼女達も、平然とおしゃべりをしている。僕は一気に安心すると共に、彼女達を信用しなかった自分を少し恥じた。

この時の Нормально は使いっぱなしで無責任の「何とかなるよ」的なものではなかった。責任感と行動力に満ちた「何とかする」的なものだった。僕らに対しては笑いながらも、雨の中を走り、店を探し、店員をせかし、車を捕まえ、申請所を何人もの通行人に聞いて探し出し、時間内に任務をやり遂げる事で、Нормально の落とし前をつけた彼女達に、この日僕は大いに力をもらった。

Нормально が常にこんなわけじゃないけど、見習う事もあるんだな。今回の交流の間も、沢山のカルチャーショックを受け、新しい発見をし、楽しみ、学んだ。国際交流をする時、他の文化と自分の文化の違いで面白いところを見つけて笑うのではなく、自分の文化よりも良い所を見つけて成長したい。もっと大きくなりたい。